
会場を埋め尽くすのは、トレンドの最先端を行く現役の美容師さんたち。 業界外の人間である私にとって、そこはかなりの「アウェイ」な環境でしたが、どうしても直接お話を聞きたかった相手がいました。
原宿・表参道の激戦区で、常に時代の一歩先を走り続けているヘアサロン「grico(グリコ)」の代表、エザキヨシタカさんです。
grico(グリコ)とは 美容の聖地・原宿で圧倒的な人気を誇るトップサロン。代表のエザキ氏は、美容業界のミシュランガイドとも称される格付け「KAMI CHARISMA(カミカリスマ)」において、最高峰の三つ星を幾度も獲得。全国の美容師の頂点に立つ技術者として、日本のみならず世界からも注目を集めるトップアーティストです。
講演の中でエザキさんは、自身のモットーとして、また経営者としてスタッフに伝えている大切な「在り方」について語られました。
それは、美容師という仕事は「カッコイイ」が仕事であるということ。 けれど、それは決して表面的な見た目の華やかさだけを指すのではありません。 当たり前の挨拶を徹底し、身だしなみを意識し、そして誰にも見えない場所で地道な努力を積み重ねる。そうやって自分自身を律して生きること、その姿勢こそが本当の意味での「カッコイイ」なのだと。
エザキさんご自身がそのように道を切り拓いてこられたという自負と、スタッフに対しても同じ「カッコよさ」を求める情熱。それは単なる職業観を超えた、エザキヨシタカという一人の人間のストイックな「生き様の定義」でした。
その言葉の重みは、翌日の「ベスト・オブ・ミス熊本」のステージでも鮮やかに証明されていました。 ゲスト審査員として登壇されたエザキさんが、ファイナリストへ投げかけた、たった一つの質問。 それは、「今までで一番努力したことは何ですか?」という問いでした。
一見すれば高身長で小顔、どんな難題もさらりとこなしてしまう天才肌に見えるエザキさん。しかし、その問いの鋭さには、彼自身がこれまで誰よりも地道に積み重ねてきた圧倒的な努力の裏付けがありました。本物だけが持つ「凄み」は、他ならぬ彼自身の研鑽から滲み出ていたのです。

特に刺激的だったのが、「思考の柔軟性」を問うワークです。 「今から円錐をたくさん描いてください」というお題に対し、多くの参加者が図形の円錐をいくつも描き込む中、エザキさんの答えは想像を超えていました。
「『円錐』という文字を書いてもいいんだよ。つまり、形に縛られなくていいってこと」
美容師だからといって、ハサミを持って髪を切るという手段だけに固執する必要はない。 実際、エザキさんは現在、美容室の枠を超えて古着ショップなどの事業も多角的に展開されています。「美容師が古着を売ってもいいじゃない!」という軽やかな発想。 固定観念を壊し、常にイノベーション(技術革新)を追求する姿勢は、変化の激しい時代を生き抜くための本質を突いていました。
「他と違ったユニークな存在であることが、競争に勝つための唯一の戦略だ」 この言葉は、どの業界にも通じる普遍的な真理です。 スキルがあるのはプロとして当たり前。その上で、自分だけの「個性」をどう戦略的に打ち出して、どう選ばれる存在になるか。経営者としての彼の視点は、参加者それぞれの胸に深く響いていました。

何より心を打たれたのは、エザキさんの圧倒的な「人間力」です。 講演後、お写真を撮っていただく際、私が自撮りをしようと構えると、彼はスッと私のスマホを手に取り、自らシャッターを切ってくださいました。
背が高く腕の長い彼が自撮りをすることで、相手の顔が大きく見えないように……。そんな細やかな、それでいてさりげない気遣いが自然にできる人なのです。
また、本番のヘアショーでは、裏側で道具の準備が不足するという緊急事態があったそうです。しかし、客席の誰一人としてその動揺を感じることはありませんでした。 わずか10分強でモデルをドラマチックに変身させる、華麗でスピーディーなパフォーマンス。 その余裕のある立ち振る舞いは、想像を絶する事前の準備と、彼が一人で積み上げてきた地道な努力があるからこそ成せる業でした。
さらに、二日間を通して強く感じたのが、エザキさんの「人を褒める力」の凄さです。 とにかく周りの人をよく見て、その魅力を言葉にするのが本当にお上手なのです。
講演会でも、質問した男性に対し「あなた、カッコイイよね」と声をかけたり、熊本の方々の顔立ちの良さを褒めたり。ヘアショーの最中も、モデルさんを「この方、元々かわいいんです」と紹介されていました。
その優しさは、本人がいない場所でも変わりませんでした。 イベント終了後、会場からホテルへ向かうマイクロバスでご一緒した際、エザキさんが他の方にこう話しているのが聞こえてきました。 「今回カメラマンをしていたHIROさんは、人と人をつなぐのが本当に上手な方なんです。HIROさんのおかげで……」
本人がいないところで、その人の貢献を認め、称える。 それは、エザキさんの根底にある「深い思いやり」の現れだと感じました。相手の良さを瞬時に見抜き、それを惜しみなく言葉にして伝える。そんな彼の「在り方」こそが、多くの人を惹きつける磁石になっているのだと確信した瞬間でした。
ベスト・オブ・ミス熊本の事務局の方が、こんな愛のある皮肉を仰っていました。
「イケメンで高身長、それなのに性格も良いなんて。よっぽど性格が悪い方が、こっちはやりやすいのにな(笑)」
これはまさに、エザキさんに対する最大級のリスペクト。 「天が二物を与えた」のというよりは、彼自身が「血の滲むような地道な努力で磨き続け、周りの人への愛に変えてきた」からこそ、みんなが憧れるのでしょう。
エザキヨシタカさんの「柔軟な思考」と「努力の美学」、そして「人を想う心」。 その背中に触れた二日間は、私にとっても、これからの歩みを支える大きな糧となりました。
こちらのブログで使用した写真は「フォトグラファー HIRO」からお借りしました。
彼の作品はこちらでご覧いただけます:HIROさんのインスタは【コチラ】
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